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村上春樹との出会い、そしてサヨナラ、そして今でも。

もっともお金のかからないすぐ近所の国立大学に入ったものの、一日も早くやめて東京に出て、なぜだか本屋さんでアルバイトをしながら芥川賞を狙って小説を書く予定だった19歳の私は、大学の授業に全く興味がなく、図書館や本屋で、本ばかり読んでいた。そんなある日、のどかな初夏の日差しが入り込む市の図書館の雑誌閲覧コーナーで、ふと一冊の文芸雑誌の表紙が目に入って来た。

Img_3874 「今年度群像文学新人賞、決定!村上春樹氏、-風の歌を聴け ー」。手に取り、ぱらぱらとページをめくった。ムラカミハルキ・カゼノウタヲキケー最初の1行、2行から、体中に電撃が走った。体は、硬直し、その姿勢のまま、瞬きもせず、呼吸もせず、数時間、一気に読み終えた。私は、それから、5年間、病気になった。書くもの書くもの、みんな村上春樹の文章になってしまうのだ。それは、しかし、私一人の問題ではなかった。日本中のプロ、アマ問わず20代、30代、40代の文章を書くものには、村上春樹が降りてきて自動書記状態を起こしてしまうのだった。みんな村上春樹病にやられたのだ。日本壊滅状態だった。しかし、私は、そのおよそ5年の月日をかけて、免疫抗体を作ることに成功した。

私は、標本箱に納められた味わい深い昆虫の魅力から、野原や森や川原で飛びまわる蜜を吸い美しくも時に厳しい自然の摂理、棲み分けと競争、マクロとミクロの大潮流の中でこの今を現実に生きる虫たちの素晴らしさ、その世界の素晴らしさに気づき心から感動できる感性をより強く取り戻すことができた。この世界は、村上春樹以下だったのに、やっとこの現実世界が村上春樹を超えてくれたのだ。でも、私は、生涯、村上春樹の「風の歌を聴け」を読んだ時に、異常な電子の交流が体内を激走したあの感動を忘れない。おもしろくておもしろくて読み終わりたくない気持ちで読み続け、後にも先にも、本を読み終わることにあんなに深い悲しみ、さびしさを覚えたことはない「羊をめぐる冒険」、とにかくワクワクして面白かった「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」。それら、村上春樹の初版本は、今でも宝物として本棚に収まっている。

Img_3871 今、世界が村上春樹に熱狂している。ロシア、アジア諸国でも、ヨーロッパやアメリカでも、村上春樹フワァンは、どんどん増殖している。ここ数年前からは、ノーベル文学賞の候補としてノミネートされ続けている。来年、「ノルウェイの森」が映画になるという。まさか、村上春樹が、そんなことさせるかと思ったが、シナリオが村上春樹の全面書き下ろしという。それならあるだろう。私は、あえて英訳版で読もうと思う。今日から、読み始めている。辞書は使わず、読み通うそうと思う。「ノルウェイの森」を読み通せたら「羊をめぐる冒険」にも挑戦したい。脳科学者の茂木健一郎氏が、英語がわかり出来るようになるやり方として、自身の体験を踏まえ、兎にも角にも辞書を使わず読み続けていると或る時、それは突然と英語がわかる瞬間が来るという話を雑誌で書いていたのだが、とても納得の出来る話だったのでマネしようと思う。英語圏の海外旅行では困らない程度、ネイティブでない筑紫哲也や、麻生太郎の英語なら何とかいくらか分かる程度の英語力を、もう少しレベルアップしたい。いつまでも、私も若くないし、いつまでも寿命はあるものじゃない。もっと世界のあちこちと行ってみたい気持ちが溢れている。

Img_3857 風の歌を聴け (講談社文庫)

羊をめぐる冒険

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

ノルウェイの森〈上〉

ノルウェイの森〈下〉

ホームページ「ナカムラユウコウの世界」http://www.nakamurayukoh.com/

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コメント

いつも、こんな素敵な文章を書くナカムラユウコウさんは、どんな本を読み、好きな作家は誰なのかなぁsign02と思っていました。


発売当時に読んだ「ノルウェイの森」を、また読もうと思っています。今読んだら、どう感じるのか、楽しみですconfident

投稿: くりりん | 2008年11月22日 (土) 22時44分

1987年9月10日初版・第一刷「ノルウェイの森」、ボクは東京にいました。デパートや、大きな書店やら何やらあちこちで「村上春樹・・待望の・・・・・!」と垂れ幕をたなびかせ、その年の東京の秋は、村上春樹一色でした。発行部数870万部のこの怪物セールスに象徴されるムラカミハルキフィーバーは、村上春樹自身をうんざりさせ、それから数年、彼は日本から脱出し数年間、南の国で暮らしました。内容の云々はさておいて、そういう彼の実生活においても大きな意味のあった作品です。じっくりと味わいながら楽しんでください。

投稿: ナカムラ | 2008年11月23日 (日) 19時42分

「ノルウェイの森」読みました。
こんなに夢中になって本を読んだのは、久しぶりでした。
およそ20年前に一度読んでるのですが、当時の私には理解し辛かったところも、今読み返すと容易に理解できたりと、自分の変化も楽しめました。

ナカムラさんは、英訳版で読まれているのですね(゚0゚)
なんかカッコイイですね!もう読み終えられたのでしょうか? 突撃隊は世界中の人も笑うでしょうねhappy01


投稿: クリリン | 2008年12月11日 (木) 23時18分

そうですか。読みましたか。私の方は、なかなか進んでいません。日常的に、本屋に行くのが習慣、クセになっているので、抑えているのですが、興味深い雑誌や書籍が、次々、やって来て困ったものです。思っていたよりも、分からない単語や表現があって、辞書を使いたいという誘惑と戦いながら悪戦苦闘してます。でも、思わぬ、副産効果もあって、「ノルウェイの森」の英訳版を読み始める前は、苦労していた物理学者のリサランドールの日本語の書物が気持ち、楽に読めるようになりました。英語で苦労している分、「少々難解と言えど、これは日本語だろう」という、思いが脳を励ましているのかもしれません。「ノルウェイの森」の英訳版は、頑張って読みきりたいと思っています。

投稿: ナカムラ | 2008年12月15日 (月) 11時57分

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