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「出し惜しみと取り置き」厳禁!の巻き

Jpg_2  貧乏話も良かったけど、世の中、不景気。
億万長者の話の方がいいなって、
街で会った友人に言われました。

 ブログを書く上、文章を書く上で、最近
心の核に留めているお話があります。

 知人が、昨年、新幹線に乗ったら、
トランベールという無料配布の雑誌が
座席ごとに置いてあった。

パラパラめくっていたら、
内館牧子さんの、それはそれは感動的な
エッセーと出会ったというのです。

 私は彼にその内容を聞いて感動しました。
早速、コピーを貰い自分でPCで打ち直し
機会を見つけては友人や絵や写真、文章を
描いている創作仲間にあげました。

 誰にとっても、特に創作している人にとっては
本当に身震いする物があるのではないでしょうか。

 また、視点は違うのですがあの「蛇にピアス」で
芥川賞を20歳で受賞した美形天才少女の金原ひとみ

さんが、以前、雑誌ダ・ヴィンチの対談記事で、
自分の小説作法について語っていましたが、
これにも感動しました。

 彼女は、一番感動的な場面から書き始め、
何もプロットも決めずに書いていくというのです。

 クライマックスに使うため、大切に取って置き
そこに結びつけるように書くというのでなく
その一番書きたい、自分で痺れる場面が
スタートで後は、それが、引っ張って行って
くれるという趣旨の話をしてました。

 気持ちいい。いい女ぷりです。痺れました。

 そんなこと、心にとどめ私も文章を書いて
行きたいと思っています。


「踊り子号」の男 内館牧子

ある日、私は伊東に向かうために
「踊り子号」に乗っていた。
列車が湯河原を過ぎた頃だったと思う。
突然、嗚咽が聞こえてきた。
近くの席で、五十代かと思われる
男性乗客が泣いている。
彼は絞り出すような声で、連れに言った。

「女房、ずっと元気で生きてるもんだと
・・・頭っから決めてて・・・あんな急に・・・」
 彼と連れの会話によると、
三か月前に妻が事故で急死したらしい。
彼は妻を大切に思っていたし、
いつも感謝していたが、
それを表現しなかったようだ。

涙声で、
「旅行とか人気のレストランとか温泉とか、
行きたがってたのに、
俺は『定年後はいつでも行ける』
とか言って、仕事や自分のことを優先して・・・」
と言うと、連れに向かってつぶやいた。

「お前はちゃんとやってやれよ。
人なんて急に死ぬんだからさ・・・『後で』
って言ってると・・・相手がいなくなってる・・・」
私は窓外に輝く熱海の海を眺めながら、
遠い昔を思い出していた。

 

 脚本家の橋田壽賀子先生が『おしん』を
書かれている最中、私は先生の熱海の
仕事場に通っていた。

膨大な資料を整理する程度の手伝いだが、
卵以下の私にとって、
一流脚本家のそばにいられるのは、
何ものにも替え難い幸せだった。

 それから約十年後、私はNHK朝の連続テレビ小説
『ひらり』を書くことになった。
先生は大喜びされ、一席設けて下さった。

私は暮色の熱海が一望できる一室で、
たったひとつだけアドバイスを頂いた。

「出し惜しみしちゃダメよ」
これは強烈だった。

さらにおっしゃった。
「半年間も続くドラマだから、
ついついこの話は後に取っておこうとか、
この展開はもう少ししてから使おうとか
考えがちなの。
でも、後のことは考えないで、
どんどん投入するの。
出し惜しみしない姿勢で向かえば、
後で窮しても必ずまた開けるものよ」
 
実はその時、私はすでに半年分の大まかな
ストーリーを作り終えていた。
出し惜しみと水増しのストーリーだった。

熱海から帰った夜、私はそれを全部捨てた。
向き合う姿勢が間違っていたと思った。

「出し惜しみしない」という姿勢は、
人間の生き方すべてに通ずる気がする。
 私が伊東で下車する時、妻を失った彼は、
虚ろな横顔を見せて窓外を眺めていた。

橋田壽賀子もすごいが、内館牧子もすごい!

ホームページ「ナカムラユウコウの世界」http://www.nakamurayukoh.com/

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