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朝5:55分に携帯電話鳴る。オレンジ色の太陽は街を黄金色に染める。

P1310838_2 携帯がなった。
夜中?いや、朝方だ。

なんじゃい!?
こんな朝早く?
誰か死んだか?

朝の5:55分。

女性の声だ。

「今日は、朝の太陽がすばらしいわよ。」

ーえっ、誰?ー

「誰かわからない?
 誰かわかろうとする前に
 急いで出かけなさい!!
 すばらしい時間は一瞬よ。
 特に昇りかけの朝日と
 沈みかけの夕日はね。
 私もそこにいるから」

ーえっ、そこって、どこ?
 って言うか
 あんた、だれ?ー

電話は切れた。

 えっ、何??だれ??
 そもそも、この電話主、人間?

 5年前、愛犬のボッシュが春に亡くなった。
 その冬に、彼は、携帯に出てきて
 4度大きな声で吼え火事を知らせてくれた。
 両隣、近所マル焼けの大火事を免れた。
 
 その事があって以来、
 この世には、そういうことが
 本当にあるのだということが
 実感としてわかった。

 そういうものは、特に、電波には
 乗りやすいという話も
 聞いたことがある。

ただの、間違い電話だろう。
私を誰かと勘違いして話しているかもしれない。
あまり若くはないな、10代、20代の娘ではない。
かといってお年寄りまではいってない。

まぁ、いいや。目もすっかり覚めたし
久しぶりに朝日を撮りに行こう。
朝日と、その空に浮かんでいる
雲たちの織り成す、黄金の風景を写真に
収めることは、私の趣味でもある。

服を着、カメラを準備しながら
私はいろいろその電話の女性のことを
女性の言葉を反芻しながら
考えていた。

私は『私もそこにいるから』って
彼女の言葉が気になっていた。

『私もそこにいるから』って
この私が、どこに行くか、どこに行こうか
解っているということ?
それとも、どこに行こうが
空の上からでも見ているということ?
はたまた、ストーカーのように
電信柱から電信柱へと
素早い足か、無い足でヒューヒュー移動して
私についてくると言うのか?

ま、間違い電話だろうな。

たとえば、昔に別れた
写真を撮るのが好きだった彼に
おふざけ半分に、電話した。

で、二人は、かって
よく一緒に写真も撮りに行ったりしていて、
夕日と言えばどこ、朝日と言えばどこと
解っていて、きっと朝日を見ながら二人は

『あっ、良かった。
 あなたが写真なんか撮らない人間になってたり
 ここじゃない所に行っちゃったら
 どうしようって、ちょっとドキドキしてたんだ。』

『おい、頼むよ、いつも突然なんだから
 で、元気だった?今、どこにいるの』

なんて、会話をするつもりの元彼の男役に
きっと彼女が間違って私に
電話したのだろう。

車に乗りキーを差し込み
エンジンをかける頃には
そんなふうに考えがまとまっていた。

ドアから覗く外はまだ真っ暗だ。
ただ向こうが少し黄金色に輝いている。
ここは住宅街で建物が遮っている。
まず、走り出そう、どこかフラットなところまで。

大きな道路に出たら既に街は
うっすら黄金色に包まれ
ビルの合間から大きなオレンジ色に燃える
太陽が覗いている。

いい写真の撮れそうな予感だ。

迷ってうろうろしているうちに
シャッターチャンスを
失ってしまう。

どこのだれだか解らない彼女の言うように
すばらしい時間は一瞬で、
特に昇りかけの朝日と
沈みかけの夕日においては
そうなのだ。
彼女の言うことだけは正しい。

すぐそばの大きな公園に向かった。
新幹線の高架橋が少し離れたと所を
公園と並行して走っている。

ベストな瞬間に間に合いそうだ。

私はパチパチ思いのままに
ズームを変化させながら
カメラを立て位置、横位置に
しながら、お金を拾い集めるように
がめつくその黄金の風景を一枚一枚
写真に収めていった。

一通り思いつく構図を
撮り納めたかなと思った頃だ。

その時だった、後ろから
声がしたのだ。

「おはよう!」

女の声だ。
電話の声だ。

誰でもいい、ブスでも美人でも
若くてもお婆さんでもいい
その他、もろもろ少々難ありでも構わない。

ただ、人間であってくれと祈った。

振り返らぬ訳にも行かない。

でも彼女が、振り返った瞬間
『ワタシ、キレイ・・・?』なんて聞いて来て
口の大きく裂けているお方だったらどうしよう。

どんな事実が待っていようが
振り返らず自分の脳の中で
抑えがたく勝手に膨張する
恐怖の映像、スチュエーションが
私の私が私であり続ける
脳のコントロールセンターを
破壊しそうだったのだ。

勇気ではなく蛮勇でもなく
仕方が無く、振り返った。

ーおーっ!なーんだ。太陽おばさんじゃないか!!ー

正体は太陽おばさんだった。

この星に30名くらいいるとも
いないとも言われる
美しい朝日の日の朝や
美しい夕日の日の夕暮れ時に
「写真撮りに行きなさい!」って
携帯に適当な番号を打ち連絡するボランティア団体の
おばさんたちだった。

どれだけ彼女たちが
この世界のためになっているか
検証できていない。

いずれ、私は、いやー、ほんと、今朝は、
驚かされました。

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コメント

① 絵本のような世界を感じます。                      ② 太陽は木の枝や電線の向こう側にあるはずなのに、写真の太陽は    手前側にあるかのように見えて、興味深いです。

投稿: 光阿 | 2011年2月10日 (木) 18時39分

光阿さん

こんにちは。

そうなんです。よく写真気づきましたね。
あの日は本当に変な日で
太陽が円盤のように空を
ひゅうひゅうと動いていたのですよ。
時間としては、きっと短かったと思いますが
あの日の私は、自分の時間感覚に
自信がありません。

地動説が天動説になったり
世界は私たちが知らないところや、寝ている間に
時々、変なことがいろいろと
起こっているのかもしれません。


投稿: | 2011年2月11日 (金) 17時40分

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