« 朝5:55分に携帯電話鳴る。オレンジ色の太陽は街を黄金色に染める。 | トップページ | なるべくの話ですが・・・・ »

なんだっけ?「夢を見るために・・・・」

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです Book 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

著者:村上 春樹
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

午前中本屋に行く。

数日前、弟が、書く・創る人間には
とてもためになるし、おもしろいと
村上春樹の本を薦めてくれた。

タイトルを忘れた。
電話をする。

ーそうか、
『夢をみるために毎朝僕は目覚めるのです。

夜型制作の画家の弟には少し早い
目覚まし電話になったかもしれない。

少々、夢見がちの声だった。

それにしても、なんて、村上春樹らしい、タイトル。
らしすぎて、うそっぽくて
本当に彼が付けたタイトルかと
疑いたくなるほどだ。

ビジネス書にはビジネス書の書き方
評伝は評伝、論文は論文の
書き方があるだろう。

村上春樹は作家を
「起きていて夢を見れる人」といっている。
タイトルにも符合する考え方だ。

村上は、自分もどのようにストーリーが展開し
キャラクターたちがどう行動し
彼らの正体も村上自身解らないで
書いているという。
書くことで自分も解っていくということだ。

それは、知らない自分との出会い
自分自身の深い深い深層の闇の発掘作業であり
作品を書き上げるたびに、作品を書くことで
見かけは何一つ変わらずとも、
自分は以前の自分でなく変化し進化している
という。

深く共感できる。

村上春樹は本当に普通だ。
難しいことを何一つ言わない。
だから、読まれる、
だから本当に強いのだろう。

この本は、1997年から2009年まで
の雑誌などでの対談の記事をまとめたものだ。

彼の小説作法や物語の生み出し方は
特別なものではない。
多くの人が、多くの機会に
言っていることばかりだ。

P1310887 しかし、そんなもんだ。
物語が沸き書き起こし
見えるシーンを丁寧にコトバに
変換していく作業に、そんな
特殊なノウハウなど無い。
みな同じ感覚で物語を
創造しているだろう。

方法の凄さではなく
掘り起こされ
書き起こされコトバに還元され
書きと留められたそのイメージの
豊かさの優劣であり
村上春樹のそれは、今、この星で
一番人気があるといっていい。

私は19歳で村上春樹の作品とであった。
村上が初めて書いた小説『風の歌を聴け』は
群像新人賞を取り、その文芸雑誌「群像」に
掲載された。

その掲載号を図書館の雑誌コーナー
の棚で偶然手に取り、電気を打たれた豚のように
微動せず数時間そのまま立ち続け読了するという
衝撃的な村上春樹との出会い以来30年。


この間、村上春樹の100倍も、1000倍も
難しいことを言って村上春樹と村上春樹作品を
論じる剣客たちの文章に接してきた。

それらに比べ、

この村上春樹自身の語るインタビューは
なんと素直で解りやすい。

それは、馬鹿にしているのでなく
尊敬というより敬愛の情であり
感動に近い感情だ。

ファージーでとらえどころの無い表現
煙に巻こう、知的に見せようなどという
いやらしい感情のまったく感じられない
怪物の人だ。

本当の自信家であり
そういう行為の愚かさを知り尽くし
自分の持っている知性で十分、
虚構の知性にあこがれも無ければ
その利用も必要の無い所に村上はいる。
彼が持っているのは虚構の知への憧れでなく
知への敬意と好奇心だけだ。

村上の精神は強く、他人の評価、世界の批評など
気にせず、自分が納得することを自然に
一番に出来る天才たちの共通性を持っている。

妥協の無い表現、100%も120%も
自分を快くするという意味での
驚異的集中力の持続をしうる
天才のそのものの魂に
触れている心地よさに
私は、本を読んでいる間中
包まれていた。

村上春樹は作家である。
タレントでもなければ
何か別の知的な職業人でもない。

村上は徹底的に
自分を掘り下げ、自分の中に眠る物語を
掘り起こすことで、人類普遍の物語と
人間と人類の正体を暴こうとしている。

そして、どこまでも、なによりも
村上は村上春樹を暴こうとしているはずだ。

|

« 朝5:55分に携帯電話鳴る。オレンジ色の太陽は街を黄金色に染める。 | トップページ | なるべくの話ですが・・・・ »

人生」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: なんだっけ?「夢を見るために・・・・」:

« 朝5:55分に携帯電話鳴る。オレンジ色の太陽は街を黄金色に染める。 | トップページ | なるべくの話ですが・・・・ »