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「メンチカツ」ー今日の写真。河川敷き、あぜ道の2台の自転車物語ー

Dscf7274僕はカレーにメンチカツを
入れて食べるのが
好きだった。

もちろんカツカレーは最高だけれど
あの頃の僕らの生活には
高価過ぎた。

キミはカレーにはカツ。
メンチカツを入れるのは
邪道だといって
自分の分は買わなかった。

でもキミが節約のため
自分のメンチを買わなかったことは
僕は分かっていた。

僕が少しメンチをちぎって
キミのルーの上に置くと
キミはいらないと少し
怒ったようにきつく言う。

メンチはあの頃のキミが
僕のためにやってあげられる
唯一の精一杯の贅沢で
キミはメンチ好きの僕に丸ごとメンチを
思いっきり食べさせたかったんだ。

それが僕には分かっていたけど
キミの言い方がきついもんだから
僕は少しくしゅんとなって
キミをみじめな気分にもさせたくないと思って
深追いせずに、「あっ、そうなの」と、
あっさりキミのルーの上から
メンチをもどした。

僕らは貧しくて車も無くて、
どこかにドライブしたり、
遠出することもなかったけれど
いつも夕方は近くの川原まで
自転車で散歩に出かけた。

そして雲を
通り過ぎてゆく散歩する人々を
ぼんやり見つめながら
ぽつりぽつりと何かを話して過ごした。

僕は今、よく分かるんだよ。

今日まで生きて来て
いろんな自分の時期や時代と比較して
あれは、あの頃はしあわせと呼んで
間違いなかったということがね。

ねえ、キミは
どこに行ってしまったんだい。

ある日、いつもと変わらぬ
よく晴れた夕暮れだったのに

トイレに行ってくると
あぜ道の反対側に
降りて行ったっきり
キミは帰っては来なかった。

あれから僕は
トイレから帰ってくるであろうキミを
ずっとずっと待っている。

川原に自転車は、
何年も何十年も
おきっぱなしだ。

その間、何組もの
恋人たちがこの自転車を使い
数ヵ月後、数年後、しばらくしてまた
ここに自転車を置いていく。

僕はじっとこの河川敷の階段に腰掛けて
ずっとずっと見てきたんだ。

僕は時々思い出す。
今でも思い悩む。

あの時、キミが怒って言ったとしても
メンチをキミのルーの上に置いたままで

ーキミが居ればメンチ半分でも
 僕はしあわせだよ。ー

あるいは

ーカツもメンチも無くて
 ルーに肉も野菜もこれっぽっちも
 入っていない世界一貧乏くさいカレーでも、  
 キミが居れば世界一のディナーだよー

と、くさい役者が言うようにキミを笑わせ
僕が分けたあのメンチを
キミにも楽しく食べさせる力量が
あの時の、あの時の僕にあったのなら

あったのなら

キミはあぜ道の反対側の
僕の知らない世界に
消えて行ってしまうことは
なかっただろう。

キミは今、どこかで
誰かとしあわせに暮らしているのですか?
楽しく生きているのですか?

許してください。
一人でメンチカツを
一個まるごと食べた僕を。

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